4年ぶり3回目に見るクラシック作曲家兼ピアニスト兼シンガーソングライターの世武裕子のライブ。この日はシンガーソングライターモードでのライブでした。
4年前に見た時はクラシックのセットとシンガーソングライターのセット半々で、自分は前者の方が好みだったのですが、今回のライブは共演者がおもしろそうで、行ってみたいなと。ピアノ/キーボードを弾く世武裕子に、ベース/ギターの福岡晃子(チャットモンチー)、ドラムの白根賢一(Great3)、タブラのU-zhaanという編成。あまりつながりがない(Great3とU-zhaanがrei harakamiで間接的につながりあるくらい?)メンバーだと思うのですが、どんなきっかけで集まることになったんでしょう。衣装は世武裕子指定らしく福岡晃子は黄色っぽいシャツに茶色い蝶ネクタイ、ヒョウ柄のタイトスカートと、キレイなおねえさまなタイプ。白根賢一は白シャツに黒ネクタイをルーズに着ているかっこ良いおじさま、U-zhaanはインドの正装(だったかな?)で、紺色のアオザイっぽいもので、U-zhaan自身は「これで人前出たくなかったです」と自分だけ異なるタイプの衣装にちょっぴりご不満のよう。
前持ってセットリストが書いた紙が配られますが、折りたたんであって見たい人だけ開いてねと。「クラシックだとあらかじめ何やるか知らせてやるのが普通だけど、ロック/ポップスはセットリストを知りたくない人が多い。そのどちらにも配慮してみました。」と、両方知る人ならではですね。
ピアノ、ベース、ドラムの編成が軸ですが、曲によりメンバーの抜き差しがあり世武のピアノを主役として、ギターとドラム、ベースとタブラ、ドラムのみ、タブラのみなどいろんな組み合わせで編成してました。曲調も前回見た時よりも多彩で、華やかなポップス調のものからしっとりと歌い上げるもの、高音の突き抜けるようなボーカルで歌い上げるもの、などなど。声はどれだけ情感込めて歌い上げても、どこか淡々としているというかあっさりしているように感じられる世武のボーカルですが、ピアノ音とも合わさって良い個性になっているな、と。前回聞いた時よりも断然に入り込んで聞きました。
カバーもあり、サカナクションの「ユリイカ」(自分は知らない曲で、後でセットリスト見て知る)、YUKIの「JOY」、チャットモンチーの「染まるよ」。「染まるよ」は音節の区切り方がオリジナルと異なるもので、アレンジもそれに沿ったもの。ただ、時折オリジナルに沿ったリフやフレーズも出て来るので、「結構混乱しますねー。」とオリジナルを普段演奏する福岡のコメント。
各メンバーとの音のかみ合わせもおもしろく、印象に残っている場面は、1,2曲目辺りは王道なロック/ポップス調で、そこでうれしそうにベースリフ弾く福岡。3曲目辺りではギターを担当していたり、中盤辺りではプログレな複雑なフレーズをピアノとユニゾンでベース弾いていたりと。また、この場面ではピアノ、ベースのプログレなユニゾンがしばらく続いた後にU-zhaanの高速タブラが重なってきたりして強烈でした。
世武とU-zhaanの2人でのインプロセッションもあり、高音で鳴らすピアノ音に同じく高音のタブラが絡むところなんかは気持ち良かったですね。タブラはサンプリングも駆使して怒涛のリズム攻撃になったりする場面もあり。それに応えるように世武もピアノの上に置いてあるキーボードも使って轟音な展開に持って行ったりしてました。U-zhaanはタブラだけでなくユーフォニアムを吹く場面もあるのですが、ひさびさに聞くような。
ドラムの白根賢一はGreat3やCurly Giraffeのライブ見た時にかっこ良いドラムだなーと思っていて今回のライブでも同様に感じながら、いろんなタイプのリズムで聞かせていて、楽しいといった新たな印象も。ロック/ポップスだけでなく、ジャズやプログレなどある展開でも硬軟交えた叩き方で聞かせていました。
MCもふんだんにあり、こんなにしゃべる方だったのねと思いました。天然キャラっぽい印象。福岡はチャットモンチーでも抜群のフォロー力(橋本絵莉子のMCに対する)を見せますが、この日も活躍。かなりあちこちに話が飛ぶ世武のしゃべりに対して、うまいこと相槌打ったり、話収束させたりと。また、小話の達人U-zhaanは本編では控えていましたが、アンコールでのトークでは爆発。ぽんっと言った話が多くのお客の笑いを誘っていました。
2時間半近くに渡るライブは複雑なピアノのフレーズを軸としていろんなアレンジを局面局面で味わえて楽しかったですね。リハーサルとか事前の準備も大変だったんだろうなーと思われます。「難しいアレンジで結構練習したのに、直前でセットを変えられ大変だった」「事前に行ってた内容と違う。ここでこんなにしゃべるんだっけ?ピアノ少し弾いている間に、タブラのチューニングするとかじゃなかったっけ?」と世武にクレーム入れながら、そうした緻密さとおおざっぱさがないまぜになったライブをみんなで楽しんでいるようでした。