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2017/05/17 Tim Hecker at 渋谷WWW X

 カナダ出身の電子音楽家Tim Heckerのライブ。初めて見ます。今回は事前に会場内にスモークを炊いた中で行われるという予告がされていました。開場に時間かかっていて、ライブ開始前の15分前に入場開始。場内に入ると大量のスモークでもくもく、2,3メートル先が見えない状態。こういった中でライブ見るの初めてです。ステージ前方には横一杯に照明器具が並べられ、その後ろに演奏機材が置かれています。
 
 15分過ぎからライブ開始。ステージも暗い中で行われるのでTim Heckerの姿はほとんど見えません。1時間ほどのノンストップのライブは会場の雰囲気と電子音から放たれる強烈さ、深遠さなど刺激的な空間になっていました。音そのものは飛行機が離着陸する時のような不穏な音を拡大化させたようなもの。ライブ開始時は両脇にあるスピーカーからは音を出さず、ステージにあるスピーカーからのみの音出しでじわじわとした立ち上げ。それが徐々に両脇のスピーカーから音を出して迫力ある展開になります。低音が強烈で体がビリビリしたりする体験もひさびさ。その後もステージにあるスピーカーと両脇にあるスピーカー間での音の移り変わりを入れてきて、起伏ある展開を持たせていました。
 
 親しみやすいフレーズや明確なリズムはほとんど無し、ノイズやアンビエント要素あるのかもしれませんが、ストイックに作り込んだ抽象音を重ねている印象が何より強烈で、想像がもくもくと書き立てられました。1時間のライブの音の変化で自分が受け止めたストーリーみたいなものを妄想全開で書き連ねます。
 
 真夜中の港から出発する大型船。暗やみの中で不安を呼び起こすような船の音。天候も悪く出発しても全く先が見えない。船から出される不穏な音以外にも、豪雨、雷、荒れた波を思い起こすような音が暗やみの中にうごめくように重なります。会場内のスモークは船がどこへ進むか見いだせない、絶望感を持って進んでいるかのよう。ステージ前方にある照明が淡い光を時折放ちますが、その光だけでは進むべき道が見つからないかのよう。
 
 中盤でメランコリックな音が出て来ます。断片的ながらビートも織り込まれるようになって、そこから船の進むべき道を見出したかのような印象になってきます。船から出るような不穏な音はそのままですが、そこに変化を付けた音が織り込まれるようになります。不安なままではあるが、希望が少しずつ出てきたかのような。そして終盤やわらかいメロディとリズムが出てきて、ステージ前にある照明が一斉に客席後方上方へ淡い光を放ち明滅を繰り返します。それは船が進むべき航路をはっきりと見出したような印象を受けました。
 
 船から出るような不穏な音は持続したままですが、希望がどんどんと満ちてくるような音の方が徐々に強くなります。天候も徐々に良くなってきて、そして夜が明けて来るかのような。そして早朝穏やかな港に無事辿り着いたような落ち着いた音を持ってきたところでライブが終了しました。会場暗いままTim Heckerはステージ前方に出てきて挨拶して喝さいを浴びて終了しました。特別感あるライブを堪能しました。

 

 

author:de nudge, category:live(渋谷WWW,WWW X), 08:22
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